死化粧はしないで肌荒れるから


私は醜形恐怖症である。


醜形恐怖症とは、自らの容姿が醜いと「思い込み」、人の目に触れる場所に赴くと怖くてどうしようもなくなる「病気」らしい。




醜形恐怖症(身体醜形障害とも呼ばれます)では、実際には存在しない外見上の欠点やささいな外見上の欠点にとらわれることで、多大な苦痛が生じたり、日常生活に支障をきたしたりします。

(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/10-心の健康問題/強迫症および関連症群/醜形恐怖症)




いわゆる精神病の一種らしいのだが、しかし当人には「病気」という自覚なんて無いもので、しかも実際容姿は醜いのだから「思い込み」もクソもなくただの「事実」として醜形恐怖はそこにある。


外出なんてしようものなら、他人から気持ち悪いと思われているんじゃないかと不安になり、いてもたっても居られなくなり、額に脂汗をかき、ついでに脇汗もかきまくり、膝は震え始めて、ただのブスが汗っかきの挙動不審ブスになるのである。地獄がそこにあるのだ。




初めてその症状を自覚したのは中学一年生の頃である。まさしく思春期によるただの悩みかと思われたが、まずはコンビニや本屋のレジに行けなくなり、次に外出すれば人の目が気になるようになり、しだいに喋っている人を見れば自分の容姿の悪口を言っているのだと妄想し、しまいには学校には行けなくなった。




こんな調子で陰キャラも真っ青な鬱屈とした青春時代を過ごし、高校生になる頃には化粧を覚え、だんだん学校に通えるようになった。18歳になって整形をすれば、人の沢山いる場所でもパニックに陥ることはなくなった。




今でも醜形恐怖は顔を出す。けれど以前は寝てる時以外は容姿のことを考えていたのが、それは三分の一の時間程度には治った。以前は家の中でも3分に一度は鏡を見ていたのが、風呂と化粧以外にはそれほど見なくなった。(でも外に出るとやっぱり何回も何回も見ちゃうのだ)


それでもまだ私は容姿の美醜に囚われている。湯水の様に美容にお金を使ってしまうし、スキンケアや化粧に何時間でもかけてしまう。でもそれは、前向きな変化であると思う。マイナスをプラスにしようともがいているのだから。




今より少しでもブスでないように、ではなくて、今より少しでも美しくなれるように。そうやって考えられるようになったのだ。




昔は自分が死ぬ時といえば自殺くらいしか思い浮かばなかったが、今はきっと事故か老衰か他殺なんだろうなと思う。


何歳に死ぬかなんて分からないけど、私に掛かったこの呪いは生涯解けそうにないので、死んでしまったらとりあえず、死化粧は肌が荒れるので遠慮して頂きたい。化粧したまま寝るなんて、美容の一番大敵なんだと思うから。